筆者プロフィール

本名 高橋司、ベアレン創業メンバー。
ドイツの大学へ留学中にビールの魅力にハマり、国内地ビールメーカーでの経験を経て、現在に至る。

ウルズスについて(その2)

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(ラベルの製造日が2003年11月12日、もちろん中身入り。2017年11月28日撮影)

ウルズスは私にとって、非常に思い出深いアイテムなので、連載でお送りしたい。

【ウルズスの商品開発について】

2003年11月に初めて発売となったウルズス。

創業年のこの年、ウィンタービールを限定販売しよう、といいうことになっていたのだが、裏ではもう一つチャレンジがあった。

当時、創業1年目で非常に苦しい時期だったな、とたまに振り返ることがある。コピー用紙は裏紙を使用する、という暗黙のルールができたのもこの当時だが、配達した段ボールを再利用したり、販促パネル作成を自分たちでやったり(これは今もやっているけど)ととにかく考えられることを実行にうつしていた。色々と考えられる中で、思い切ったことをしたな、と思うのはウルズスのラベルで、今では普通になったが、実は『一枚ラベル』になったのはこのウルズスからである。

当時、ビール(に限らず酒類全般)のラベルは、表ラベル、裏ラベル、と2種類用意して、表には商品名、ブランド名など表示。裏ラベルには、製造年月日、原材料などいわゆる「酒税法上必要な表記」を書いているものが多かった。ビールを年間100万本生産するとして、ラベルが2枚から1枚に変更になると、それだけでコストが単純に1/2になる。(本当はそこまで減らないけど、話は簡単にしておく)仮に20円だったものが10円になると、2,000万円⇒1,000万円となり、1,000万円のコストダウンになるのだ。当時、木村と嶌田が「1枚でも全部表示できるな」「コストダウンになるし、いけるな」と話し合い、即決で進んだ。

しかし...

「それじゃ、ツカサ、ラベル貼り頼むね。」 当時ラベル貼りまでやっていたわけだが、簡単にできるはずのラベルがうまく貼れない。ラベラーという「ラベル貼り専用機械」を通じて瓶ビールにラベルが貼られるのだが、どうやっても、製造年月日の印字が枠に収まらない。

(まさか!?)

そう思って、最大限値まで印字位置を調整するも、枠に収まらない。どうやっても上手くいかない。限界までラベルの調整位置を伸ばしても、枠に印字が収まらない。

(最大値まで伸ばしているのに...無理じゃん!)

全身から血の気が引いた。コストダウンのはずが、すべて無駄になるんじゃないか?ラベルは変わらない。機械も変わらない。人力でいちいち1本ずつラベルを貼っていたら何時までかかるか分からない。どうしようもなく、追い込まれたが、しばらく考えていて一つのアイディアが舞い降りた。

「あ!ラベルの調整位置の最大値を超えればいいんじゃね?」

今思うと、自由すぎる発想だったな、と思うのだが、機械のアームの部品の可動範囲を伸ばすように勝手に手を加えて調整。故障したら、保障対象外だろうな、ということは後になって気づくのだが...。

現在は、すべてのラベルが「1枚ラベル」。そして、当時のラベラーもリニューアルされて最新式になっているので、ビクビクするようなことも無い。冬、ウルズスの時期になると思いだされる、思い出の一つである。