イングリッシュ・ペリーの話(その2)
洋ナシの品種を変更することで、液体の味わいがどれだけ変わったのか?
今回の変更点について少し詳しく製造チームに聞いてみた。
バートレットという洋ナシの品種は、
本場英国のペリーの製造でも使われており、以前から検討していた品種だった。
今回は、追熟される前に搾汁し発酵(当然ながら、加水は一切していない)させている。
発酵も上手く進み、だいぶ良い状態で仕上がっている。
とのこと。
今回、マイスターの宮木に聞いているのだが、
珍しく「強くおすすめしたい」と自信をのぞかせている。
(製造チームは、「悪くないよ」といつも控えめに言うのでよほど今回は自信がある、ということだろう)
★そこで、実際に試飲してみました!
まず、驚くのは淡い洋ナシの香り。すこし、青リンゴに近いニュアンスもあるが、
実際に口にすると酸がしっかりとあり、糖がキレッ切れ。
酸があるためペリーの味わいのバランスがしっかりととれており、
飲み終わりまで味わいにモタつきを感じませんでした。
まるで白ワインのような感じでした。
正直言って、昨年とは異なる味わいに仕上がっており、
果実の品種違いでここまで異なるのか!と驚いています。
確かに、誰かに「飲んでみてよ!」と言いたくなる味わいです。
私も強くお勧めします!
(製造数量が少ないので、早期完売の可能性が高いです...。)
イングリッシュ・サイダーは、なぜシードルと呼ばないのか?
イングリッシュ・サイダーを説明するときに、いつも困ることがある。
それは...
「結局、リンゴのお酒でしょ?シードルとサイダーと何が違うのよ?」
おっしゃるとおりだと思う。
何が違うのか?その液体だけに目を向けると、「同じ」としか言えない。
だけど、「イングリッシュ・サイダー」として私達は販売し続けている。
いったいなぜか?
一番の理由は、私達が「ビールの醸造所」だからだ、という
アイデンティティがそこにあるから、だと思う。
英国のパブで飲まれるエール。
そして、そのパブ文化の中にエールと一緒に文化を作り上げてきたサイダー。
この古い歴史のあるパブ文化を支えてきたサイダーは間違いなくシードルとは違う。
エールのように、パイントに注がれて飲む。
出来上がったサイダーは、時にはパブのオーナーが
樽サイダー開栓から徐々に変化する味わいをコントロールし飲み手に伝えて楽しむ。
私達は、本場英国のそんな文化をリスペクトしている。
だから「イングリッシュ・サイダー」という名前であって、
「シードル」として販売していない、ということになる。
今年も、地元の農家の方々が収穫されたリンゴをたっぷり贅沢に使ったサイダーが出来た。
今年は糖度が高く、アルコール度数が昨年より0.5%上がった。
地元の方々と大切に作り上げたサイダーをぜひとも味わっていただきたい。
ベアレンが造るアップルラガーの話。
アップルラガー、と聞くと、「ああ、フルーツビールね。アルコールも低いんでしょ?」と思われる方も多いかもしれない。
しかし、そうではないんですね。
アルコールは5.5%(2017年)となっており、通常のビールと同じくらいの高さです。
これは、ビール+果汁、では出来ないんですね。
なぜなら元のビールが濃くなければ5.5%のアルコールにならないから。
それじゃ、なぜ、そうなるのか?
ビールの基になる麦汁の段階で、絞りたてのフレッシュなリンゴ果汁を加えて発酵させています。そのため、リンゴの糖をビール酵母がアルコール発酵させていくので、薄まらず5%前後まであがるのです。
当然、リンゴの糖度によって、アルコールの高さが異なります。今年のリンゴは糖度が高ったため例年より+0.5%上がりました。
しかも、(ここが重要!)加水していないリンゴ果汁を使用しています。つまり濃縮還元を使用していない。とっても贅沢にリンゴを使用しているからこそ、一体感のあるアップルラガーの味わいになるのです。
イングリッシュ・ペリーの話
ペリーといっても、あまり日本ではなじみがないが、英国ではサイダーと同様にパブで飲まれている、洋ナシのお酒だ。
一昨年から商品化して販売しているが、製造量が少ないためすぐに完売している人気の商品。今回は、ちょっとした苦労話。
洋ナシの搾汁は、追熟前にやってしまう。
というのも、追熟してしまうと生食にはちょうどいい「ねっとり」とした上質の触感なのだが、搾汁するには柔らかすぎ、ということになる。砕くとペースト状になり、ろ過が困難になってしまうのだ。
昨年は、工場に入荷してからそれ程日がたたずに破砕したのだが、なぜか追熟してしまって、非常に難儀をした。
いったい、何があったのか?
製造チームは、疲弊しきっていたが、原因が一向にわからない。
社長の木村は言う
「あれ、破砕の時期が悪かったよな。アップルラガー用のリンゴとペリーの洋ナシの入荷がほぼ同時だったからな」
つまりこうだ。
リンゴは果実の熟成に必要な「エチレン」を発する。良く知られているのは堅いキウイとリンゴを一緒の袋に入れておくと、キウイが早く熟して甘くなる、というもの。
これが、数十トン単位で工場で起こった、と想像される。
リンゴのケースの近くに洋ナシのケースが置かれていたのだ。
今年は、時期がずれていたので洋ナシの破砕、搾汁が非常にスムーズだったらしい。
しかも今回は洋ナシの品種を変更。英国で使われる「バートレット」に変え、さらなる高みを目指す。
この話の続きは次回に。
イングリッシュ・サイダーの話
(※ごめんなさい、Webショップでは発売がもう少し先になります。)
先日(10月18日)に、イングリッシュ・サイダー1stの発酵中のモノを試飲しました。
これは、11月2日にリリース予定の飲食店限定モノ。2週間前の状態はどういう状態なのか?どの程度甘いのか?と想像しながら試飲したのだが...。
既に全く甘くない!【超衝撃的】
飲む直前までリンゴのフレッシュな甘い香りが漂い、無濾過の為、少し蜂蜜のような香りも若干していたが、口に含むと全く甘さが感じられない。むしろ、アルコールが際立ち、薄っぺらさすら感じる状態でした。
このことを、マイスターの宮木に伝え話を聞くと、
「いやね、サイダーについてはそもそも酵母がワイン酵母を使っているんでね。発酵がはじまるのが遅いんだけど、一度発酵がスタートすると、発酵のスピードが非常に早い。これは酵母にとってリンゴの糖が食べやすく、一度発酵がはじまると、ほとんど最後まで一気に糖を食べきって(アルコール発酵)しまうんだよ。」
とのこと。しかし、ならばなぜその後2週間も熟成するのか?
「ツカサくん、これは逆だよ。発酵が終わっているからこそ熟成に時間をかけている。アルコールのとがった感じを柔らかくし、味わい全体を丸くし、一体感をつくる。今の味わいにはビールでいう『未熟臭』のようなものも加わっているからね。」
なるほど。
たしかに、高アルコールのビールにもあるが、アルコールの感じ熟成によってトゲトゲしさが控えめになってくると、別の味わいが顔を出すことがある。
イングリッシュ・サイダーの場合、保存料や香料などを加えていないので、自然な香り、未熟臭などの変化に時間を要するし、重要になってくるのだろう。
宮木が加えて協調したのは以下の事だ。
「はっきり言って、リンゴ果汁を搾汁した直後にすぐに発酵へ持っていく、なんてことは他では難しいだろう。もっと言うなら、加水していない。通常は濃縮還元を使用しているだろうが、それをしていない。これは、もっと推してもいいと思う。」
この手間を惜しまない姿勢。これこそがベアレンの真骨頂だと思う。今年もイングリッシュ・サイダーが飲めるかと思うと待ち遠しいです。